名古屋高等裁判所金沢支部 平成10年(う)16号 判決
原判決が該当するとした前記法の規定は,「『ぱちんこ屋その他政令で定める営業を営む風俗営業者(法20条1項,4条3項)は,設置する遊技機の増設,交替その他の変更(総理府令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは,国家公安委員会規則で定めるところにより,あらかじめ公安委員会の承認を受けなければならない。』との規定に違反して,右の承認を受けないで,当該営業に係る営業所に設置される遊技機(法4条3項)の変更(総理府令で定める軽微な変更を除く。)をした者に該当する者は,6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。」(法49条3項1号,9条1項,20条10項),「法人の代表者,法人又は人の代理人,使用人その他の従業者が,法人又は人の営業に関し,右の違反行為をしたときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対し,右の罰金刑を科する。」(法50条)というものであり,総理府令5条は,「軽微な変更」をもって,「遊技の用に供する玉,メダルその他これらに類する物(法23条1項3号)の受け皿,遊技機の前面のガラス板その他の遊技機の部品でその変更が遊技機の性能に影響を及ぼすおそれがあるもの以外のものの変更」と定めている。
関係証拠によれば,被告人会社は,公安委員会の許可(営業種別・法2条1項7号「ぱちんこ屋」)を受けて判示パチンコ店を営む風俗営業者であること,被告人は,被告人会社の従業員で,同店の業務全般を統括する者であること,被告人は,被告人会社従業員Aと共に,同社の営業に関し,判示日時ころ,同店で,同店に設置してあるパチスロ機32台にモーニング機を接続したこと,被告人会社は,右接続について,あらかじめ公安委員会の承認を受けていないことが認められる。
そうすると,ぱちんこ屋を営む風俗営業者である被告人会社の従業者である被告人が,同社の営業に関し,あらかじめ公安委員会の承認を受けないで,当該営業に係る営業所(判示パチンコ店)に設置される遊技機であるパチスロ機にモーニング機を接続したことが明らかであるから,結局,パチスロ機へのモーニング機の接続が法にいう「遊技機の変更」に当たれば,そしてそれが総理府令が定める「軽微な変更」に当たらなければ,本件は原判決が該当するとした法の規定に該当することとなる。
「遊技機の変更」の意義についてみると,「遊技機の変更」には,その語義,更にはそれについて法が公安委員会の事前の審査に係らしめている(前記のとおり,遊技機の変更をしようとするときは,あらかじめ公安委員会の承認を受けなければならないところ,遊技機の変更の承認の申請があると,公安委員会は,当該申請に係る遊技機が著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会で定める基準に該当せず,かつ,法3条2項の規定により公安委員会が付した条件に適合しているかどうかを審査して,承認するかどうかを決する(法20条10項後段,9条2項,4条3項)。)趣旨からして,遊技機の性能に影響を及ぼすおそれがある行為が含まれるというべきであり(この解釈は,前記のとおり,総理府令5条が,公安委員会の事前審査が要求される「遊技機の変更」から除外されるところの「軽微な変更」を定めるに当たり,遊技機の部品について,それに変更を加えると「遊技機の性能に影響を及ぼすおそれ」があるかどうかを問題とし,そのおそれがある部品の変更は「軽微な変更」として「遊技機の変更」から除外されないとしていることとも整合している。),ここに遊技機の性能には,法が公安委員会において申請に係る「遊技機の変更」の承認をしなければならない場合の要件の一として「遊技機が著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める基準」に該当しないことを規定している(法20条10項後段,9条2項,4条3項)ことからして,遊技の結果の決定に関わるものが含まれるというべきである(この解釈は,国家公安委員会規則である風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則7条が,右の基準の一として,回胴式遊技機につき,「遊技の結果が偶然若しくは客以外の者の意図により決定されるおそれが著しい遊技機であること」を定めている(同条表の「回胴式遊技機」の項の「著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準」の欄の7号)こととも整合している。)。そして,総理府令5条にいう「遊技機の性能」の意義についても,右と同様に解するのが相当である。
関係証拠によれば,本件パチスロ機の仕組み,これへの本件モーニング機の接続の効果,影響は,次のようなものであることが認められる。
(中略)
本件モーニング機を所定の方法に従って接続し,パチスロ機の電源を入れると,モーニング機からメダル投入信号,スタートレバー信号,停止ボタン信号が繰り返し出力され(この信号の出力を「打ち込み」という。なお,打ち込み中は,回胴は回転せず,メダルの払い出しも行われない。),パチスロ機がビッグボーナスの内部当たりの状態になったところで,打ち込みを停止する。
上記パチスロ機で遊技すると,遊技者の技量による若干の差異はあるものの,数回の遊技を行ううちにビッグボーナスが作動する入賞図柄がそろう。
以上の事実を前提に,本件パチスロ機へのモーニング機の接続が法にいう「遊技機の変更」に当たるかどうか,総理府令が定める「軽微な変更」に当たらないかどうかについてみるに,パチスロ機にモーニング機を接続すると,パチスロ機の電源を入れることにより,ビッグボーナスの内部当たりの状態を現出させることができるわけであるところ,そのような状態になったパチスロ機で遊技すると数回の遊技を行ううちにビッグボーナスが作動する入賞図柄がそろい,遊技者は容易に多数のメダルの払い出しを受けることが可能であるというのである。そうすると,モーニング機が接続されたパチスロ機は,これを全体としてみると,スタートレバーを押して遊技を行う以外の方法によりビッグボーナスの内部当たりの状態を現出させることができる遊技機になったということができるから,右の接続という行為は,遊技の結果の決定に関わる遊技機の性能に影響を及ぼすものということができ,したがって,法にいう「遊技機の変更」に当たり,右のとおり遊技機の性能に影響を及ぼすものである以上,総理府令が定める「軽微な変更」に当たらないことは明らかである。結局,本件は原判決が該当するとした法の規定に該当することになる。